| 2025年10月21日号 |
安全確保の手順確認
緊急銃猟 県内初の実地訓練
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大仙市は15日、クマが市街地に出没した際の緊急銃猟を想定した実地訓練を神岡地域で実施した。市主催の緊急銃猟実地訓練は県内初。市や県、大仙警察署など関係機関から41人が参加し、通報から安全確保、銃猟実施までの一連の手順を確認した。住民の生活圏での銃使用には慎重な判断と安全確保が求められる一方、関係者からは対応に時間を要することへの懸念の声も上がった。
大仙市管内では今年に入ってから、例年を上回るツキノワグマの出没が相次いでいる。9月1日に改正鳥獣保護管理法が施行され、クマが市街地に出没した際、市町村の判断で緊急銃猟が可能となったことを受け、市では市街地出没マニュアルの更新など体制整備を進めてきた。訓練当日の15日、仙台市では住宅街に出没したクマに対し、改正法施行後全国初となる緊急銃猟が実施されている。
訓練は、神岡農村環境改善センターでの座学と、神岡中央公民館での実地訓練の二部構成で実施。座学では、県生活環境部自然保護課の近藤麻実主査が緊急銃猟の制度内容について解説した。
緊急銃猟は▽クマやイノシシが人の日常生活圏に侵入し▽人命や身体への危害を防ぐため緊急の対応が必要な場合において▽銃猟以外の方法では的確かつ迅速な捕獲が困難であり▽かつ住民や第三者に銃猟による危害をおよぼす恐れがない場合―に実施できる。
実地訓練は、神岡中央公民館駐車場の物置小屋にツキノワグマ1頭が侵入し、そのまま留まっている状況を想定。住民からの通報を受け、関係者が現場に集合したところからスタートした。
神岡支所農林建設課の佐々木裕子課長と大仙署の署員、仙北西部猟友会および西仙北猟友会の佐々木滋会長(75)らが、近藤主査の助言を受けながら、まず銃猟以外の方法を検討した。追い払いについては、周辺に住宅が多く、クマが逃げ込めば危険だとして見送られ、箱わなの設置は小屋の構造上、設置者の安全が確保できないため断念。麻酔銃の使用も、麻酔に驚いたクマが住宅地に走り出す可能性があることから採用されなかった。
佐々木課長は「周辺は公園や集会施設、住宅等が立ち並ぶ地域。迅速に捕獲する必要がある」として、装薬銃での捕獲を判断。公民館2階のベランダに射手2人を配置し、駆除することを決定した。住民や第三者の安全確保のため、大仙署と市が役割分担し、周辺5カ所で通行止めを実施することも決めた。
「大仙市」と書かれたゼッケンを身につけた佐々木会長らがベランダ2階で準備を整え、クマに向かって3発を発砲。最後は倒れたクマの絶命を確認し、訓練は終了した。
近藤主査は「訓練にかかった時間を鑑みても、緊急銃猟がどんな場合でも可能ではないことがご理解いただけたと思う。実際の場面では今日の訓練を思い出し、安全に実施していただきたい」と話した。
佐々木課長は「クリアしなければならない条件が様々あり、実際の対応は大変だろうと感じた」と振り返る。「緊急銃猟の範囲外にクマが逃げた場合の対応も考えておく必要がある。何よりもまず人命最優先。関係機関と情報共有しながら、皆さんの安全確保に努めたい」と語った。
一方、佐々木会長は「手順が多く、これだけ時間がかかるとなれば普通の有害駆除と変わらない。対応手順を短縮できないものか」と複雑な表情。迅速な対応と安全確保の両立の難しさを浮き彫りにしながら、関係機関が連携し、新制度のもと対応手順を確認する一歩となった。
※写真は
通行制限箇所を検討する佐々木課長ら
緊急銃猟の制度内容を解説する近藤主査
実地訓練で使用した小屋
クマが絶命したかを確認
2階ベランダから発砲する想定
クマが範囲外へ逃げ、緊急銃猟中止
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